「ジョッキー」を競馬好きの友人に薦める

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4087477770/qid=1116687532/sr=1-1/ref=sr_1_10_1/250-6744664-4927431
今日、競馬好きの友人(ちなみに明日も一緒に行動する)と本屋に行く機会があったので、「ジョッキー」という小説を読むように薦めたら、その場で買ってくれた。ボクは単行本を初版で買ったのだけど(これは我ながら反応が早かった。「競馬小説」「すばる新人賞」で買いだな、と思った)、今年に入って文庫化され、それがディスプレイされていたのだ。まぁ彼も人に借りるより自分で買った方がきちんと読むだろう。
さて、これはボクが単に競馬好きだからかもしれないけど、かなり面白かった。かつて宮本輝の「優駿」という小説を読んで、そのとき競馬はよく知らなかったのだけど面白く(映画は退屈だが)、競馬をやるようになって読んだらもっと面白かった。この小説もそんな感じなのかもしれない。競馬を知らない人が読んでも面白いだろう。しかし競馬が判る人が読んだらきっと面白い。
話は、腕はいいかもしれないが営業をして騎乗数を増やそうとしない、よって成績の上では三流の騎手が、調教師・馬主・ライヴァル騎手・厩務員・女子アナらと出会い、天皇賞の舞台に立つまでの1年数ヵ月を描いたものです。ただそれだけです。それを面白いと思うんだから、やっぱりバカなんでしょうね(苦笑)。
作家さん(松樹剛史)も20代前半のときに書いたものなので、詰めの甘い部分はあります。「朝日杯3歳S」が「朝日杯フューチュリティS」と変更されているにもかかわらず、「嵐山S」が菊花賞の前哨戦としてあったりします(両者が共存した年はない)。まぁこれも村上春樹の「フォルクスワーゲンラジエーター」みたいなものでしょう*1。小説だからアリということにしておきましょう。
しかし作者の取材はすごいです。とはいってもほとんどは本を読んで世界を構築し、ヘルメットの色が知りたいために美浦トレセンに電話を1本入れただけで、現地取材はまったくしなかったとか。松樹さんは「競馬小説はしばらく書きません」みたいなことをすばる新人賞獲ったときに言ってましたが、そういわず書いて欲しいよなぁ…と思いながらもう3年以上の時が流れてしまった。

*1:彼はこのエピソードを書いた小説を発表するが、実際にはフォルクスワーゲンラジエーターは存在しないことを知る。そのとき彼はこう言ったそうだ。「僕の書いた小説の世界のフォルクスワーゲンにはラジエーターは存在するのだ」と。しかしこれにも海外に翻訳されたとき、ラジエーターを訂正している、というオチがつくのだが。