村上春樹「遠い太鼓 (講談社文庫)」についての私見

数年前に一度ボクはこの本をブックオフで400円で見かけました。その当時「100円で見つからないかなぁ?」と思って買うのをやめたのでした。その後なかなか見つからず、最近ようやく400円で見つけて買うことができました。定価は800円…ぐらい(苦笑)。
これを買うのを控えていた理由として1986年から1989年までの旅行記という、今にしてみれば、いや、数年前としてみても、いささか鮮度に欠ける情報の載せられた書物であると感じたからです。
ただその旅行を村上さんはかなり楽しんでいたようです。「40歳になるまでに経験すべきことをきちんと経験すべきだ、そうしないと永久に失われるのだ」という感じたことによる旅行ですが、あまり無理はしていなかったようです。ギリシャの観光オフシーズンに来てやれやれと感じたり、イタリアの国民気質にやれやれと感じたり。本自体が重厚長大なので、やれやれの内容も詳しく書いていて、中身はライトです。
この本をよんで良かったと思ったのが「ノルウェイの森」がベストセラーになったときに感じたことについて書かれていたことです。「『羊をめぐる冒険』が10万部売れたとき、僕はたくさんのひとに愛されていると感じた。だが、『ノルウェイの森』が100万部売れたとき、僕は周りが敵ばかりで孤独なように感じた」というくだりの文章がありました。ボクはその話をどこかで聞いたことがあったのですが、この本に載ってたんですね。まぁ、判ってくれる人はたった1人でいいんですけどね(これは浜崎あゆみの受け売りですが)。
また、この本で村上さんは翻訳を「リハビリ」と捉えています。「グレート・ギャツビー」、「長いお別れ」と有名な大作の翻訳を刊行したあとで、どんな小説が生まれるのか…楽しみです。てな訳で、本著は普通に定価で買っても面白かった(しまったなぁ)という話でした。