「ルペ・べレスの葬儀」について

菊地成孔南米のエリザベス・テーラー(DVD付)の10曲目に収められている曲なのだけど、まさに鬼気迫るという言葉が相応しい。スパンクスやデギュスタシオンなどで聴けるメロウでスムーズな演奏ではなく、唾が飛んできそうな、音色よりも気持ちが前面に出ている。また曲も主題が3回ほど登場し、それがだんだん高揚していくという大変シンプルな構造をしている。
葬儀を題材にするときは傑作ができるのではないだろうかと思った。死者に対する祈りや、とめどない追想をモチーフに、その死者が傑作になるべく背中を押しているかのようだ。今日はしんどくなったらあのサックスの音色を思い出していた。だからうまくいったのではないかと思う。明日もうまくいくとは限らないけど。
ちなみに今日のタイトルはオテロ=ラッタという人が作曲した「英雄葬送曲」が出典なのだが(マンドリンオーケストラの曲)、これはロンメル将軍という人が題材で作られ、10分ちょっとある曲である。両方ともff(フォルテッシモ)で終わるのだけど、あのときの気持ちは万感の想いでしかない。それはとても言葉で伝えられるものではない。言葉で伝えられないからこそ、音楽で伝えようとしているのだから。