「黄色い目の魚 (新潮文庫)」についての私見

正直、今日はこんな時間に家にいるつもりはなかった。
10日前から読み出した本が急に面白くなって、睡眠時間を大幅に削ってしまった。昨日までの、いや今朝までの予定では、今日は裾直しをしてもらっているスーツを取りに行って、帰りに映画を観るつもりだった。だけど昨日睡眠時間を割いた挙句、今日も夜更かしして映画鑑賞となったら明日の仕事に支障がでるのは目に見えている。だから断念した。まぁおとなしく昨日読み終わった本の私見でも書くのが身のため、ってことだ。

てな訳で、「黄色い目の魚」でございます。
これは8編の短編から構成されていて、それが大きな1つの長編になっています。連作と呼ぶには1つの流れが明確だし、長編と呼ぶには1つ1つが独立している。こんな小説読むのは初めてです。そしてものすごく良かった。こんなの読んだことなかった。
この本を手にしたきっかけは、いつもどおり文庫新刊をチェックしていたボクにとって、裏表紙の要約文があまりに魅力的に映ったからです。「青春小説の傑作」という常套句はともかくとして、「友情でもなく恋愛でもない、名づけようもない強く真直ぐな想いが、二人の間に生まれて――。16歳(以下略)」という文章が、微妙な高校生の気持ちを率直に表していて良かったからです。
そもそもは「黄色い目の魚」という短編が十年前にあったようです。その主人公が村田さん(絵を見るのが好き)。そして「黄色い目の魚」の前に「りんごの顔」という短編が置かれています。その主人公が木島くん(絵を描くのが好き)。そしてあとの6つの短編で出会って、気になって…となっていきます。
この2人がウソをつかない(ついても絵が本当のことを映し出すから)というのがとても良い。ケータイも持ってない。酒は飲む(苦笑)。そんな2人の「強く真直ぐな想い」が最後まであふれています。まいった。ボクも自分の想いが誰かに伝わるときがくると信じてみたくなってしまったではないか。
この作者の佐藤多佳子さんは1962年生まれ、(いま流行りの)児童文学出身のようです。初めて読んだけど、それにしても抜けていた。今度本屋に行ったときに、別の作品もチェックしてみよう。