「白夜行 (集英社文庫)」についての私見

ボクはあまり「ミステリー」というものを読まない。東野圭吾、という作家についても名前は聞いたことあるし売れているというのも知っていた。ただゴメン、これは面白かった。

作品そのものについての私見

まず19年という時間に亘っての話というのが良い。ジャン・バルジャンが刑務所にいた年数と同じ(たぶん偶然だろう)というのが素晴らしい。
あとその年ごとのイコンを描写しているのが良かった。オイルショックインベーダー・ゲーム阪神タイガース優勝、スーパーマリオ、バブルとその崩壊…。その時代を亮司と雪穂は一生懸命生きていた(ただそのベクトルは時々間違った方へ向かう)と描くことでものすごくリアルに感じられるようになっていた。

原作を補完するものとしてのドラマ

一方ドラマでは15年という、殺人事件の時効を想像させる時間での話となっている。これがひょっとしたら終盤で大きなポイントとなるかもしれないけど、まだドラマは終わってないので推測の域を出ない。
原作では、亮司と雪穂の接点はほとんどが第三者の視点で描かれているために見えにくくなっている。そのためいろいろと想像してしまい(ところどころ想像しやすいように書いている。うまい)、その時を超えた強い想いにせつなくなってしまう。それをドラマは亮司と雪穂の視点で描いていて、2人の思惑に翻弄されていく人々という図式を形成している。もっともその2人が最初から運命に翻弄されていたのかもしれないけどね。
それによって頭が悪く原作で理解できなかった部分もドラマを観て理解できるようになった、という部分もあった。ドラマはよくできていると改めて思った。

再び、作品について

1冊850ページという物理的スケールもすごいけど、物語自体のスケールも大きい。だから読み終わって思い返してみたときに、どこで何を考えたかを確認する作業があまりに多くて驚いた。それが手におえなくなったとき、もう一度読み返すことになるのだろう。みんなに面白い1冊。これを普遍的というのだろうね。