市川拓司「そのときは彼によろしく (小学館文庫)」についての私見

村上春樹の「僕」という人物はとても愛されているように思えます。村上さんの小説世界は別の次元へ行ってしまったけれど、近年、片山恭一大崎善生など、フォロワー(と呼ぶには10年以上遅れて登場しているのだが)的な作家が登場するようになりました。市川さんもその1人、という認識をしていて、ボクは改めて読む必要はないだろうと思っていました。
ところが長澤まさみ嬢主演で6月2日から映画が公開されるということで、「読んでみよう」と思いました。基本的に「僕」の話は好きで、片山さんや大崎さんの話もそれはそれで悪くない、と思っていたからです。
話は29歳のアクアプラントショップを経営する「僕」が結婚紹介センターで知り合った女の子とデートしながら13歳の頃を思い出す。そこにまったく別の女の子が住み込みで働くことになるのだが…、という内容です。500ページぐらい。
これを読み始めたのはオイル交換をしてもらっているときのカーディーラーででした。一方でカフカの「審判」を読んでいたのですが、とてもその場所に似つかわしくない気がして、現代のスウィートな話に浸ろうと思いました。そしたら面白い面白い、翌々日には読了してしまいました。
「2番目に好きな人と結婚できるか」とか考えたい人にはおすすめです。なんだかんだ言っても、ボクはただ甘ったるい話を読みたいだけだったので、相当満足しました。あとは女の子とスケジュールを合わせて映画に行くだけです(苦笑)。