島本理生「ナラタージュ」についての私見

ナラタージュ

青葉賞でナタラージャが予後不良になったとき、ボクは「そういえばそういった本があったっけ」と思い出しました。ナタラージャ(Nataraja)とはインドのダンスの神様であり、ナラタージュ(Narratage)とは主人公のナレーションをモンタージュで作り上げたもの。それは後で知った訳ですけど(苦笑)。
で、島本理生女史といえば綿矢りさたんや金原ひとみ嬢とともに芥川賞候補になったものの受賞できなかった人です。ボクの本棚には「リトル・バイ・リトル (講談社文庫)」がありますが、特に印象に残ってない(苦笑)。だから1983年生まれの女性作家ということで注目はしてたけど、りさたんには及ばないからいいかな、という感じでした。
ところがこの本は面白かったです。りさたんの「夢を与える」が痛い印象しか残さないのに対して、島本さんは痛みに加えてきちんと救いを描いていた(しかも2年前に!)。
高校生のときに好きだった人がいて、その人が1年後に再び現れた。別の人と付き合ってみたものの、結局どちらとも別れてしまう。社会人になってすべてを受け入れてくれる人と出会ったけど、最後にその高校生のときに好きだった人の想いに触れてしまう。そんな話です。
また、400ページぐらいありますけど、おそらく薄い紙を使っているのでしょう、本自体ぶ厚くなく、重たい印象を受けません。表紙の凡庸そうな女の子の姿がよく小説世界を表現しているようです。てな訳で、装丁も見事です。