「ロング・グッドバイ」についての私見

レイモンド・チャンドラーの代表作が村上春樹の翻訳で出版されたのだけど、単行本はいかついなぁ…。と思っていたら、ペイパーバック版が出たので買いました。
ギムレットを飲むには少し早すぎるね」というのが名言としてある、というのは大分前から知っていました。21歳の頃はお金がないにもかかわらずよく飲みに行っていて、ギムレットを頼むのがなんとなくかっこいいと思ってしばしばオーダーしていました。もちろん、チャンドラーの言葉が頭にあったのは言うまでもありません。
しかし、なかなか読むにはいたりませんでした。「プレイバック」を高校時代によく判らないなりに読んで、何も残らなかった経験があるからです。そのときも、「強くなくては生きていけない。優しくなくては生きていく資格がない」という言葉に惹かれて読み始めました。「ロング・グッドバイ」もそうなるのではないか、という危惧がありました。しかし村上春樹の翻訳なので、きちんと読み通せる気がしました。
そして読み通すことができたのですが…すばらしかった。マーロウは村上春樹の「僕」にも共通する点がある気がしました。自分に正直で、現実を受け入れつつもなんとかしようともがいていて、そしてもてる、あるいはしっかり女性を追っかけることを考えてる(苦笑)。「準古典小説」の域に達していると訳者は評していますが、ボクにとっても折に触れて読む返す一生モノの小説になりそうです。