t.A.T.u.「DANGEROUS AND MOVING」についての私見

t.A.T.u.の1stアルバムはすごかったですね。1曲目の「Not Gonna Get Us」なんて単なるデジロックだけでなくトランスも取り入れているんですから。これについては今聴いても古さなんてなく、疾走感が残ってます。看板曲だった「All The Things She Said」はPVともども一般的に消費されてしまった感がありますが…。個人的にはサウンド面がスクーデリア・エレクトロの「ELECTROCKS」を先取りしていたのがすごいと思いましたね。
それが2003年の出来事。その年にMステのドタキャンや空席が多かったらしい東京ドームも行われたので、まさに2003年を駆け抜けた印象があります。
その旋風(つむじかぜ)が戻ってきました。前作の看板サウンドプロデューサーだったトレヴァー・ホーンは1曲のみの参加で、代わりに前作のアルバム曲のほとんどをプロデュースしたチームがシングル「All About Us」を含めて制作しています。どおりで前作の意匠を継承している訳だね。
そして豪華メンバーが参加しているのも話題です。「Gomenasai」(ゴメナサイだよ、これ…)でストリングス編曲をしているのがカーペンターズのリチャード兄ちゃん。「Friend or Foe」を作曲しているのがユーリズミックスデイヴ・スチュワートで、その曲のベースを弾いているのがスティングという、どういう人脈を駆使したらそうなったのやら(苦笑)。ちなみにこの曲はアルバムの中でも結構いい曲ですね。少なくともトレヴァー・ホーンの曲よりは存在感があります。
そしてシングル「All About Us」には作曲陣にビリー・スタインバーグの名前があります。トム・ケリーとともにソングライティング・チームを組んでマドンナ「Like A Virgin」、シンディ・ローパー「True Colors」、バングルス「Eternal Flame」という名曲を送り出してきた人です。レナとジュリアの音楽的素養(音楽学校で理論などを学んでいる)との相乗効果で美しいハーモニーが展開されています。PVはアレですけど(苦笑)。
タイトル曲では前プロデューサーのイワン・シャポハロフの名前がクレジットにあり、やはり前作を踏襲した楽曲になっています。このイントロだけでt.A.T.u.だ!という感じがしますね。
そんな感じで前作の放物線上と考えて聴いても面白いし、一旦切り離して聴いてみても面白いアルバムでした。名作にはなりえないだろうけど佳作にはなりえると思います。

しかしレジに持っていくときに恥ずかしかったのはどうしてだろう(苦笑)。