綿矢りさ「夢を与える」についての私見

19歳で芥川賞を受賞した才媛、3年ぶり3作目となる新刊がついに出ました。最近ボクは昼休みに本を読むようにしていて、これは1週間かけてじっくりと読みました。
読んでいて思った最初の印象は文章を変えてきたな、ということです。前2作は主人公の気持ち同様文章も揺れていたのだけど、今作は軸を母から子に移しながら、気持ちの揺れも伝えながらも作者は第三者としての態度をずっと保持しています。いわゆる「クリスプ」なものになっています。間違っても「葉緑体オオカナダモ? ハッ。っていうこのスタンス。」(蹴りたい背中)のような文章ではありません。これは歓迎すべきことだと思いました。さすがに3年経ってますからねぇ。刮目すべし、でした。
ストーリーは救いようのない終わり方をします。どう解釈したら良いものなのか戸惑いましたが、いまは「周りに感謝することを忘れるな」ということではないか、と思ってます。
ともすればその若さとルックスでスポイルされかねない彼女でしたが、いままでなんとかうまく振る舞えていると思います。このまま3年に1作のペースでいいので、良作を世に送り出してくれればいいな、と思いました。