「チョコレート工場の秘密 (ロアルド・ダールコレクション 2)」についての私見

すみません、これに関してはサイド・ストーリーが大半になると思います。
外国モノにおける翻訳の果たす役割が非常に大きいのは言うまでもありません。洋画のDVDを日本語吹き替えにして日本語字幕を出して、訳の違いに興味を覚えた方もいらっしゃるのではないでしょうか(ボクだけかな、そんな変なことするのは?)。
そしてこの「Charlie and the Chocolate Factory」には恩田陸さんが興味を覚えた田村隆一版と今回本屋さんに大量にディスプレイされている柳瀬尚紀版があって、どちらにするか迷いましたが、結局は柳瀬版にしました。
恩田さんをはじめ、ボクたち世代で読んだ人々は田村版で読んできている訳です。しかもそれが優れているというのだから、それを選びたかったのですが、いかんせん装丁やイラストやフォントが時代遅れのように感じました。また柳瀬版も版元は同じ評論社なので、まぁ間違いはないだろうと思いました(一応冒頭の数ページは読み比べた)。ちなみに柳瀬さんはGⅠがあるときのレーシングプログラム(中央競馬の出馬表)で馬名プロファイルを書いており、「admire = i dream」などアナグラムを駆使して馬名をポジティヴに捉える文などを見ることができます。
あと翻訳については「翻訳夜話 (文春新書)」という本が非常に面白いです。それによると翻訳というのは原典に比べて賞味期限が短いということです。例えば「いかすじゃないか」というのは30年前では正当だったかもしれないけど、現在では時代遅れな訳になっている、と書いてあります(「太陽族」みたいだと言及している)。それも踏まえて、新訳を選びました。
ところで本についてだけど、映画版の方が良かった(苦笑)。映画版でいちばん良かったのがウォンカ工場長と歯科医の父とのエピソードだけど、それについて言及されてなかった。これについては書き足した映画版の勝ちですね。
また柳瀬版はワンカ(これは田村版も柳瀬版もワンカだ。映画だけウォンカ)工場長の奇抜さがよく表現できてて好きでした。小人の歌も徹底して脚韻を踏んでいて、音楽ヒットチャートの時流を捉えているなぁ、と思いました。しかしamazonの批評ではボコボコ気味。訳者というのは表に出てくるものではなく、原文の声に耳をすませるべきだから柳瀬の仕事が鼻につくというのも判ります。とりあえずこの是非については数年後の評価を待つしかないでしょう。評論社が田村版ではなく柳瀬版を推していることも含めてだ。